出資型非営利法人について(一次案)

平成16年2月18日

公益法人改革オンブズマン

 

1 出資型非営利法人とは何か 

@市民非営利事業において寄付や会費と並び重要な資金基盤である市民出資を素直

に受けることのできる非営利法人制度を設ける。

Aその第一歩として、現在、政府が公益法人制度改革の一環として検討を進めている

非営利法人の一般法(準則主義)において、非営利の市民出資に関するオプション

規定を設ける。

 

2 出資を必要とする市民非営利事業の例 

(1)ワーカーズコレクティブ、ワーカーズコープ(労働者生産協同組合)

   介護福祉、子育て、配食等、地域に貢献する事業に自ら出資し、働き、経営に

参加する協同組合型の市民事業体。

・事業規模:数百万円〜数千万円/団体、組合員数:4名〜20名程度

・北海道、首都圏、大阪、福岡等、全国で6百団体が活動、1万6千人が従事。

  ・約8割が任意団体、約2割が企業組合又はNPO法人で法人格を取得。

・NPO法人格を取得した場合、出資金を融資又は寄付として会計処理。

・企業組合で法人格を取得した場合、出資配当はゼロ又は一定比率以下。

従事量又は利用量に応じた割戻しあり。

 

(2)市民風車(市民出資による風力発電)

  はまかぜ(北海道)、市民風車わんず(青森県)、天風丸(秋田県)

  ・市民出資で風力発電施設を建設、電力会社に電気を売って得た収益の一部を

低利率(出資額の1.5〜3.0%)で出資者に還元。

・商法の匿名組合契約を使って有限会社又は株式会社が市民出資を集める。

・一口10〜50万円、出資者250〜800人、建設費2〜3億円。

・市民風車建設後の運営主体はNPO法人。

 

(3)NPOバンク

  北海道NPOバンク(北海道)、NPO夢バンク(長野県)

・NPO向け融資制度をNPOセクター自らが構築。

・民法の事業組合に出資(1口1円、1人1万口以上)を集めて融資の原資とする。

出資配当はゼロ。

・事業組合から劣後ローンで融資を受けたNPOバンクが、事業組合の会員であ

るNPOやワーカーズコレクティブに対して融資を実行。

・融資限度額200万円、返済期間1年 

 

3 社員資格と出資の関係 

@市民出資は非営利法人の社員となるための必須要件として法定せず、各団体が定款

で任意に定められるようにする。

<考えられるパターン>

a 出資を社員となるための必須要件とする。→ 全員が出資社員

b 社員の判断で出資できるものとする。→ 出資社員と非出資社員が並存

c 出資社員を設けないものとする。 → 全員が出資しない社員

A議決権は一人一票を原則とするが、定款で出資口数に応じて議決権を定めることも

可能とする。

 

4 非営利法人の出資の性格 

非営利法人の出資は、エクイティ(株式資本)か?デット(債務資本)か?

@非営利法人の出資にエクイティとして持分を認めると、純資産額の変動に応じて

持分が増減することとなり、社員への利益の分配を認めない非営利法人の本質に反

する。

A非営利法人の出資は、社員が法人を脱退する時に出資元本が返還されるデットとし

て位置づけるべき。そうすると、利益が生じて純資産額が増えた場合にもデットは

増えないので社員に利益分配されることはない。

 

<他人資本、自己資本で区別する考え方>

@他人から受けた出資(他人資本)について利息相当額を支払うのは、借金に利息を

つけて返すのと同じこと。この利息は法人税計算上、損金に算入される。

A社員の出資(自己資本)については非営利法人であるが故に持分を観念することは

できず、出資元本を超えて剰余金が生じた場合も分配されない。また、非営利性を

明確にするため出資配当を禁じる必要があると考えられる。

 

5 剰余金の非分配 

 非営利法人なので、剰余金を分配しない。

ただし、非営利共益法人である協同組合の扱いを参考とし、以下のとおりとする。

@出資配当はゼロとし、出資額に応じた機会費用の補償は国債利子率以下に制限する。

→非営利法人の出資はデットの性格を持つことから、機会費用として出資金を国債

購入に充てた場合に得られたであろう利息相当を出資に還元することは、法人の

非営利性に反するものではない。

→協同組合でも出資額に対し、一定の利率以下で機会費用が補償されている。

A法人の提供する財・サービスの利用量や法人活動の従事量に応じた割戻しは、購入

値引きや役務の対価の性格を持つので、剰余金の分配ではなく、事業に伴う経費と

して扱う。

→法人税法別表3の協同組合等においても、利用量・従事量に応じた割戻しは経費

として損金算入されている。

 

6 残余財産の非分配 

非営利法人であるが故、解散時の残余財産は社員に分配しない。残余財産は、他の

非営利法人若しくは公益法人または国若しくは地方公共団体に帰属させることを

法定し、解散時においても非営利性を厳格に貫く。

 

7 課税原則 

 法人活動から生じた剰余金の非分配(※)、残余財産の非分配を法定し、非営利性

を保つことを前提に法人税を非課税とする。何故なら、法人税は配当所得に対して

所得税を前どりするものであり、利益を社員や出資者に分配しない非営利法人に

ついて法人税を課税する根拠はないからである。

 

※利用量・従事量に応じた割戻し、出資金への国債利子率以下の利息支払いは、法人

の事業に伴う経費であって、剰余金の利益分配ではない。法人税法上も損金として

扱われている。

 

8 事後チェックの仕組み 

法人設立後、実際に非営利が担保されていることを事後的にチェックできる制度と

する必要がある。

 @NPO法人制度に準ずるレベルの情報開示を行うものとし、法人の定款、役員名簿、

事業報告書、決算報告書等の書類を社員、利害関係者以外に一般市民も閲覧できる

ものとする。

A非営利性が担保されていない場合には、社員、利害関係者、一般市民(要検討)の

請求に基づいて、裁判所が法人に対して解散命令や組織変更を求めることができる

ものとする。

 

9 ワーカーズコレクティブ法、ワーカーズコープ法制定運動との関係

@ワーカーズコレクティブ、ワーカーズコープ(事業に出資し、従事し、経営に参加

することを構成員の要件とする協同組合型の非営利法人制度)の制定を目指す運動

が96年から続いている。

Aこれら法人類型は、非営利法人一般法に対して出資型非営利法人の特別法に位置づけ

られる。非営利法人一般法に出資に関するオプション規定が入れば、定款を工夫する

ことによりワーカーズコレクティブ、ワーカーズコープの設立は可能となる。

Bしかし、その要件を法定することにより税制優遇等の効果を持たせ、ネットワーク

連合組織、非営利協同基金などを制度として位置づけるには、将来、特別法の制定

が必要。